「気づくと、子どもに『すごいね』『えらいね』ばかり言っている」
「褒めないと、何もやらなくなってしまった気がする」
「褒めすぎはよくないと聞くけれど、じゃあ何と言えばいいの?」
子どもが何かできるようになったとき、頑張っている姿を見たとき、自然と褒め言葉が出てくるものですよね。
子どもを褒めること自体は、決して悪いことではありません。
しかし、毎回「すごい!」「えらい!」と伝えているうちに、「これでいいのかな?」「もっと違う言葉をかけた方がいいのかな?」と迷う保護者の方もいるのではないでしょうか。
モンテッソーリ教育では、大人が一方的に評価することよりも、子ども自身が「できた」「楽しかった」「頑張った」と感じられることを大切にしています。
そのため、子どもの行動や気持ちを具体的に言葉にして伝える関わり方が重視されています。
この記事では、「すごい」「えらい」に頼らない声かけを、絵や工作を見せに来たとき、テストで100点を取ったとき、片付けや着替えができたときなど、身近な場面ごとにご紹介します。

子どもを褒めすぎるとどうなる?
「すごい」「えらい」は悪い言葉ではない
まず知っておきたいのは、「すごい」「えらい」という言葉そのものが悪いわけではないということです。
子どもが初めて自転車に乗れたときや、一生懸命つくった作品を見せてくれたとき、思わず「すごい!」と声が出ることもあるでしょう。
そうした素直な喜びを、無理に抑える必要はありません。
ただし、どんな場面でも同じ褒め言葉だけを繰り返していると、子どもが自分の行動を振り返る機会が少なくなる場合があります。
例えば、絵を描いたときも、片付けをしたときも、テストでよい点数を取ったときも、すべて「すごいね!」だけで終わっていたらどうでしょうか。
子どもは褒められてうれしくても、何を見てもらえたのか、どんな工夫に気づいてもらえたのかまでは分からないかもしれません。
大切なのは、褒め言葉をなくすことではなく、伝え方の幅を広げることです。
褒められることが目的になる場合もある
子どもは、大好きな大人に認めてもらえるとうれしいものです。
一方で、大人からの評価を強く意識するようになると、活動そのものを楽しむことよりも、「褒めてもらえるかどうか」を気にする場合があります。
例えば、絵を描くたびに「上手?」と確認したり、何かする前に「これをやったら褒めてくれる?」と尋ねたりすることがあります。
もちろん、こうした言葉が出ること自体は自然なことです。
ただ、子どもがいつも大人の評価を求めているように感じたら、少し声かけを変えてみてもよいかもしれません。
「上手かどうか」だけでなく、「何を描きたかったのか」「どんなところが楽しかったのか」に目を向けてみましょう。
失敗を怖がるようになることも
結果ばかりを評価されていると、子どもによっては、うまくできなかったときに不安を感じることがあります。
例えば、テストで100点を取ったときだけ大きく褒められると、点数が低かったときに「がっかりされるかもしれない」と感じる場合もあるでしょう。
もちろん、褒めることだけが失敗への不安の原因になるわけではありません。
子どもの気質や経験、周囲の環境など、さまざまな要素が関係します。
だからこそ、結果がよかったときだけでなく、うまくいかなかったときにも、子どもの気持ちや取り組んだ過程を受け止めることが大切です。
モンテッソーリ教育は本当に「褒めない」の?
褒めないのではなく、「認める」ことを大切にする
「モンテッソーリ教育では子どもを褒めない」と聞いたことがある方もいるかもしれません。
しかし、それは子どもの頑張りに無関心でいるという意味ではありません。
モンテッソーリ教育では、子どもが自分で活動を選び、取り組み、達成感を味わうことを大切にしています。
そのため、大人が「よい」「悪い」と評価するだけでなく、子ども自身が自分の行動や成長に気づけるような関わり方を重視します。
例えば、子どもが最後まで絵を描いたとき。
「上手だね!」と評価する代わりに、「紙の端まで色を塗ったんだね」と伝える方法があります。
子どもが実際にしたことを、そのまま言葉にする関わり方です。
「褒める」と「認める」はどう違う?
二つの違いを、具体例で見てみましょう。
| 場面 | 褒める言葉 | 認める言葉 |
|---|---|---|
| 絵を描いた | 上手だね! | 赤と青をたくさん使ったんだね |
| パズルが完成した | すごいね! | 最後のピースまで自分ではめたね |
| 片付けをした | えらいね! | ブロックを全部かごに戻したね |
| 着替えができた | お利口だね! | ボタンを自分で留められたね |
| お手伝いをした | いい子だね! | 手伝ってくれて助かったよ、ありがとう |
「褒める」は、大人が評価を伝える言葉。
「認める」は、子どもの行動や気持ち、取り組んだ過程を具体的に受け止める言葉です。
どちらか一方しか使ってはいけないわけではありません。
ただ、「認める」言葉を増やすことで、子どもは自分の行動に目を向けやすくなります。

絵や工作を「見て!」と持ってきたときの声かけ
見えたことを、そのまま言葉にする
子どもが絵や工作を見せに来たとき、つい「上手!」と言ってしまうことはありませんか?
そんなときは、まず作品をよく見て、目に入ったことを具体的に伝えてみましょう。
例えば、
- 「赤と黄色をたくさん使ったんだね」
- 「ここに、ぐるぐるの線がいっぱいあるね」
- 「紙の端まで色を塗ったんだね」
- 「大きな丸と小さな丸があるね」
- 「いろいろな形を組み合わせたんだね」
といった言葉です。
作品の完成度を評価するのではなく、子どもが実際に描いたものや工夫したことに目を向けます。
「ちゃんと見てもらえた」と感じることが、子どもにとってうれしい経験になる場合があります。
何を描いたのか、子どもに聞いてみる
子どもの絵を見て、「これはお花かな?」「お家を描いたの?」と、大人が意味を決めてしまうことがあります。
しかし、子どもが描いたものは、大人が想像しているものとは違うかもしれません。
そんなときは、無理に当てようとせず、子ども自身に話してもらいましょう。
「どんな絵を描いたの?」
「どこが一番気に入っている?」
「これはどうやってつくったの?」
子どもが「これは公園だよ」と教えてくれたら、「そうなんだ、公園を描いたんだね」と受け止めるだけでも十分です。
質問をたくさんする必要はありません。
子どもが話したそうにしているときには耳を傾け、見せるだけで満足している様子なら、無理に説明させなくてもよいでしょう。
子どもの作品を、大人の正解に近づけない
子どもが絵を描いているとき、「空は青い方がいいんじゃない?」「ここは赤く塗るときれいだよ」とアドバイスしたくなることがあります。
しかし、子どもは自分なりのイメージや表現を楽しんでいるのかもしれません。
作品づくりでは、大人が考える正解に近づけることよりも、子ども自身の表現を尊重することが大切です。
子どもが助けを求めてきたときには必要な援助をしながら、自分で考えている時間を大切にしてみましょう。
テストで100点を取ったときの声かけ
点数だけでなく、取り組んだ過程を見る
小学生になると、テストの点数や成績を見せに来ることも増えてきます。
100点を取ったときには、もちろん一緒に喜んでよいでしょう。
そのうえで、点数だけでなく、そこまでの取り組みにも目を向けてみましょう。
例えば、
- 「毎日、漢字の練習をしていたもんね」
- 「前に難しかった問題が、今回はできたんだね」
- 「何度も見直していたね」
- 「苦手だったところを練習していたね」
といった言葉です。
実際に見ていない努力を決めつけて褒める必要はありません。
子どもが取り組んでいたことや、以前との変化を具体的に伝えることが大切です。
子ども自身の気持ちを聞いてみる
100点を取ったとき、子どもはどんな気持ちなのでしょうか。
うれしい、安心した、頑張ってよかった。
あるいは、思ったより簡単だったと感じているかもしれません。
そんなときは、
「うれしそうだね」
「自分ではどう思った?」
「どの問題が一番難しかった?」
と聞いてみるのもよいでしょう。
大人が評価を伝えるだけでなく、子ども自身が経験を振り返るきっかけになります。
点数が悪かったときも、態度を大きく変えない
100点のときは大喜びするのに、点数が低いときには強く叱られる。
そうした経験が続くと、子どもは結果を見せること自体に不安を感じる場合があります。
点数が思うように取れなかったときも、まずは子どもの気持ちを聞いてみましょう。
「難しかったところがあったんだね」
「どこが分からなかった?」
「次はどうしてみようか?」
結果だけで子ども自身の価値を判断しないことが大切です。

片付けや着替えができたときの声かけ
片付けができたとき
子どもが自分でおもちゃを片付けられたとき、「えらいね!」と褒めることもあるでしょう。
そんなときは、具体的にできたことを伝えてみましょう。
「ブロックを全部かごに戻したね」
「絵本が棚に並んだね」
「床がすっきりしたね」
「手伝ってくれて助かったよ、ありがとう」
特に「ありがとう」は、評価ではなく感謝を伝える言葉です。
子どもが家族の一員として役に立てたことを感じるきっかけにもなります。
着替えができたとき
着替えには、ボタンを留める、袖に腕を通す、ズボンを引き上げるなど、細かな動作がたくさんあります。
大人にとっては当たり前でも、子どもにとっては難しい活動です。
そんなときは、
「ボタンを一番上まで留めたね」
「今日は靴下を自分で履いたんだね」
「袖に腕を通せたね」
「最後まで自分で着替えたね」
と、できた部分を具体的に伝えてみましょう。
全部できなかった場合でも、途中まで自分で取り組んだことを認められます。
ただし、毎回言葉をかける必要はありません。
子どもが自分の活動に満足している様子なら、そっと見守るだけでもよいでしょう。
何も言わずに見守ることも大切
集中しているときは、声をかけない
子どもが何かに夢中になっている姿を見ると、つい「すごいね!」「上手にできているね!」と声をかけたくなります。
しかし、活動に集中しているときには、あえて声をかけないことも大切です。
例えば、パズルのピースを何度も試しているときや、積み木を慎重に積み上げているとき。
大人が話しかけることで、集中が途切れてしまう場合があります。
モンテッソーリ教育では、子どもが自分で選んだ活動に集中する時間を尊重します。
大人が常に反応するのではなく、必要なときに援助できる距離で見守ることも、一つの関わり方です。
うなずきや笑顔だけでも伝わる
子どもが何かできたとき、必ず言葉で反応しなければならないわけではありません。
目が合ったときに笑顔を返す。
うれしそうな表情に、にっこりうなずく。
子どもが話し始めたら、手を止めて聞く。
こうした関わり方からも、子どもを大切に思う気持ちは伝わります。
「何と言えばいいのか分からない」と悩んだときには、無理に言葉を探さなくてもよいのです。
褒められないとやらない子になっていたら?
急に褒めるのをやめなくて大丈夫
「今まで褒めすぎていたかもしれない」と気づいても、突然褒めることをやめる必要はありません。
いつも反応してくれていた大人が急に何も言わなくなると、子どもが戸惑う場合もあります。
まずは、普段の褒め言葉に具体的な一言を添えてみましょう。
「すごいね!最後まで自分でやったんだね」
「えらいね。言われる前に靴をそろえたんだね」
「上手だね。いろいろな色を使ったんだね」
少しずつ、評価する言葉だけでなく、子どもの行動を認める言葉を増やしていきます。
自分で達成感を味わえる活動を増やす
子どもが褒められることばかり気にしているように感じたら、自分で達成感を味わえる活動を増やしてみましょう。
例えば、
- 洗濯物をたたんで、決まった場所に戻す
- 自分のコップに水を注ぐ
- 簡単な料理のお手伝いをする
- パズルを最後まで完成させる
- 自分で選んだ服に着替える
といった活動です。
モンテッソーリ教育では、日常生活の動作を通して、子どもが自分の力を使う経験を大切にしています。
活動そのものが楽しい、自分でできるとうれしい。
そんな経験を積み重ねることで、大人からの評価以外にも喜びを感じられる機会が増えていきます。
「自分ではどう思う?」と聞いてみる
子どもが「上手?」「すごい?」と何度も聞いてくる場合には、すぐに評価を返すだけでなく、子ども自身の気持ちを聞いてみてもよいでしょう。
「自分ではどう思う?」
「どこが一番気に入っている?」
「やってみてどうだった?」
こうした問いかけは、自分の経験を振り返るきっかけになります。
ただし、質問ばかりにならないように気をつけましょう。
子どもがただ喜びを共有したいときには、「うれしいね」「できたね」と一緒に喜ぶだけでも十分です。

よくある質問
Q. 「すごい」と言ってはいけないのですか?
いいえ、言ってはいけないわけではありません。
子どもの頑張りに感動したときは、素直に「すごい!」と伝えてよいでしょう。
大切なのは、毎回同じ評価だけで終わらせず、具体的に取り組んだことや子どもの気持ちにも目を向けることです。
Q. 祖父母がたくさん褒めるのですが、やめてもらうべきですか?
無理にやめてもらう必要はありません。
褒め言葉には、子どもを大切に思う気持ちが込められていることもあります。
家庭では、行動を具体的に認めたり、気持ちを受け止めたりする関わり方を大切にしてみましょう。
Q. 失敗したときは、何と言えばいいですか?
まずは子どもの気持ちを受け止めることが大切です。
「悔しかったね」
「ここが難しかったんだね」
「何回も試していたね」
といった言葉をかけてみましょう。
無理に励ましたり、すぐに成功させようとしたりする必要はありません。
Q. 「ありがとう」も褒め言葉になりますか?
「ありがとう」は、相手の行動に対して感謝を伝える言葉です。
例えば、子どもがお皿を運んでくれたときに「ありがとう、助かったよ」と伝えるのは自然なことです。
無理に評価へ置き換える必要はありません。
家族の中で感謝を伝え合うことも、大切なコミュニケーションです。
まとめ|「すごい」「えらい」より大切なのは、子どもをよく見ること
「すごい」「えらい」は、決して悪い言葉ではありません。
しかし、毎回同じ言葉だけで褒めるのではなく、子どもが実際にしたことや、取り組んだ過程、感じている気持ちにも目を向けてみましょう。
絵を見せに来たら、描いたものを具体的に伝える。
テストで100点を取ったら、そこまでの取り組みに目を向ける。
片付けや着替えができたら、できたことをそのまま言葉にする。
そして、子どもが集中しているときには、あえて何も言わずに見守ることも大切です。
モンテッソーリ教育では、大人から評価されることだけでなく、子ども自身が活動を通して達成感を味わうことを重視しています。
大切なのは、上手な褒め言葉を探すことよりも、目の前の子どもをよく見て、その子の行動や気持ちを受け止めること。
「すごいね」に頼りすぎていたかも、と感じたら、今日から一言だけ、具体的な言葉を添えてみませんか。
モンテッソーリ久が原子どもの家では、子ども一人ひとりの興味や取り組みを尊重し、自分で考え、活動する時間を大切にしています。
先生たちが子どもたちにどのような言葉をかけ、どのように見守っているのか気になる方は、ぜひ教室での体験を通して、実際の様子をご覧ください。