「毎朝『早くして!』と何回も言ってしまい、出かける前から親子でぐったり……」
「パジャマのまま遊び始めて、気づいたら家を出る時間になっている」
「怒りたくないのに、朝だけはどうしても声が大きくなってしまう」
朝の支度をめぐって、こんな悩みを抱えていませんか?
着替え、朝食、歯磨き、持ち物の準備。朝はやることがたくさんあるうえに、出発時間も決まっています。
大人は時計を見ながら「あと10分しかない!」と焦っているのに、子どもはのんびり遊んでいたり、突然別のことを始めたり。
何度も「早くして!」と声をかけ、結局最後は大人が全部手伝ってしまうこともありますよね。
しかし、子どもの朝の支度が進まないのは、必ずしもやる気がないからではありません。
時間の感覚がまだ育っていなかったり、何から始めればよいか分からなかったり、そもそも自分で支度できる環境になっていなかったりする場合があります。
モンテッソーリ教育では、子どもが自分でできるようになるために、大人が環境を整えることを大切にしています。
この記事では、子どもの朝の支度が進まない理由から、「早くして!」に代わる声かけ、年齢別の任せ方、服や持ち物の置き方、前日の準備まで、家庭で実践できる工夫をご紹介します。

子どもの朝の支度が進まないのはなぜ?
子どもには「急ぐ」という感覚が分かりにくい
大人は「8時に家を出るから、7時半には着替えを終わらせよう」と、時間から逆算して行動できます。
しかし、幼児期の子どもは、まだ時計の読み方や時間の長さを十分に理解できないことがあります。
「あと10分で出発だよ」と言われても、10分がどのくらいの長さなのか、何をどこまで終わらせればよいのかが分からないのです。
また、子どもは目の前のことに強く興味を引かれることがあります。
着替えようとしていたのに、床に落ちていたブロックが気になり、遊び始めてしまう。
大人から見ると「どうして今遊ぶの?」と思うかもしれませんが、子どもにとっては、目の前の興味に気持ちが向いている状態なのです。
まずは、大人と子どもでは時間の捉え方が違うことを理解しておきましょう。
「支度して」だけでは、何をすればよいか分からない
「早く支度して!」
朝によく使う言葉ですが、実は「支度」という言葉には、たくさんの動作が含まれています。
例えば、園に出かけるまでには、次のようなことが必要です。
- パジャマを脱ぐ
- 服に着替える
- 朝ごはんを食べる
- 顔を洗う
- 歯を磨く
- 靴下を履く
- 園かばんを持つ
- 靴を履く
大人はこれらを一連の流れとして理解していますが、子どもはまだ順番を覚えている途中かもしれません。
「支度して」と言われても、何から始めればよいか分からず、手が止まってしまうことがあります。
そんなときは、「まずズボンを履こうね」「次は歯磨きだよ」と、やることを一つずつ伝えてみましょう。
自分でできる環境になっていない
子どもが自分で支度しようと思っても、必要な物に手が届かなければ、大人に頼るしかありません。
例えば、服が高い引き出しに入っている、靴下がどこにあるか分からない、園かばんが大人用の棚に置かれている、といった状態です。
こうした環境では、子どもが自分で動くことは難しくなります。
モンテッソーリ教育では、子どもの体の大きさや発達に合わせて、道具の置き方や環境を整えることを大切にします。
朝の支度でも、子どもが自分で取り出せる、使える、元に戻せる環境をつくることが、自立への第一歩になります。
なぜ「早くして!」と言っても伝わらないの?
「早く」だけでは、次の行動が分からない
「早くして!」という言葉は、大人の焦りを伝えることはできても、具体的に何をしてほしいのかまでは伝わらないことがあります。
例えば、子どもがパジャマのまま座っているとき。
「早くして!」と言われても、子どもは着替えるべきなのか、朝ごはんを食べるべきなのか、分からないかもしれません。
また、何度も同じ言葉を繰り返していると、子どもがその声かけに反応しにくくなることもあります。
大切なのは、急ぐように伝えることよりも、次に何をすればよいか分かるようにすることです。
「早くして!」を具体的な言葉に変えてみよう
朝の声かけは、短く、具体的にすることがポイントです。
| よくある声かけ | 言い換えの例 |
|---|---|
| 早くして! | 次は靴下を履こうね |
| まだ着替えてないの? | ズボンはここに置いてあるよ |
| 何回言わせるの! | 次は何をするんだったかな? |
| いつまで遊んでいるの? | ブロックは帰ってきてから続きをしようね |
| もう出る時間だよ! | 靴を履いたら出発しよう |
| ちゃんと準備して! | 帽子と園かばんを持ってきてね |
一度にたくさんの指示を出すのではなく、一つの行動が終わってから次を伝えてみましょう。
大人が落ち着いて伝えることも大切
朝は大人も忙しく、気持ちに余裕がなくなりやすい時間です。
何度も声をかけているのに子どもが動かないと、つい声が大きくなってしまうこともあるでしょう。
しかし、強い口調で急かされると、焦ったり、気持ちが乱れたりして、かえって支度が進まなくなる子どももいます。
そんなときは、遠くから何度も呼ぶのではなく、子どものそばに行って、短い言葉で伝えてみましょう。
「次はシャツを着ようね」
それだけで、子どもが次の行動を理解しやすくなる場合があります。
毎朝穏やかに対応することを目標にしすぎず、まずは声かけを一つ変えることから始めてみてください。

朝の支度は何歳から自分でできる?年齢別の目安
子どもが自分でできることは、年齢や発達、これまでの経験によって異なります。
ここでは、朝の支度で任せやすいことを年齢別にご紹介します。
| 年齢の目安 | 任せてみたいこと |
|---|---|
| 2歳頃 | 脱いだパジャマをかごに入れる、靴を自分で履こうとする |
| 3歳頃 | かぶるタイプの服やズボンを着る、食卓にコップを運ぶ |
| 4歳頃 | ボタンのある服に挑戦する、歯磨きを自分で始める |
| 5〜6歳頃 | 服を選んで着る、園の持ち物をそろえる、時計を見て行動してみる |
これらはあくまで目安であり、すべての子どもが同じ年齢でできるようになるわけではありません。
なお、歯磨きは子どもが自分で行うようになっても、磨き残しを防ぐために大人による仕上げ磨きが必要です。
いきなり全部任せず、一部分から始める
子どもに自分で支度してほしいと思っても、最初からすべてを任せる必要はありません。
例えば、着替えなら、
「シャツは手伝うから、ズボンは自分で履いてみよう」
「靴下をここまで履かせるから、最後は自分で引っ張ってみよう」
と、できそうな部分から任せてみましょう。
モンテッソーリ教育では、子どもが自分で取り組めるように、必要な部分だけ援助することを大切にしています。
大人がすべて代わりに行うのではなく、子どもができる部分を残すことがポイントです。
自分でやるための時間を確保する
子どもが自分で着替えたり、靴を履いたりすると、大人が手伝うより時間がかかることがあります。
そのため、子どもに任せることを増やすなら、朝の時間に少し余裕を持たせることも大切です。
例えば、いつも出発直前に靴を履き始めるなら、5分早く玄関へ向かってみる。
着替えに時間がかかるなら、朝食の前に服を準備しておく。
生活の流れを少し調整するだけでも、大人が待てる時間をつくれる場合があります。
ただし、睡眠時間を削って早起きさせるのではなく、就寝時間も含めて無理のない生活リズムを考えましょう。
子どもが自分で支度しやすくなる環境づくり
服は子どもの手が届く高さに置く
朝の支度をスムーズにするために、まず見直したいのが服の収納場所です。
子どもが自分で取り出せる高さに、シャツやズボン、靴下を置いてみましょう。
収納する服の種類や数が多すぎると、何を選べばよいか迷うこともあります。
そのため、子どもが選びやすい量に絞るのがおすすめです。
例えば、よく着る服を2〜3日分程度にしておき、季節外れの服や予備の服は別の場所に収納する方法があります。
また、引き出しやかごに「シャツ」「ズボン」「靴下」などの写真やイラストを貼っておくと、文字が読めない子どもにも分かりやすくなります。
大切なのは、収納をきれいに見せることではなく、子どもが迷わず服を取り出せることです。
園の持ち物は一か所にまとめる
園かばん、帽子、水筒、ハンカチなどが家のあちこちに置かれていると、出発前に探す時間が増えてしまいます。
そこで、玄関やリビングの一角に、園の持ち物をまとめる場所をつくってみましょう。
例えば、
- 園かばんを掛ける低いフック
- 帽子を入れるかご
- ハンカチを置く小さな棚
- 出発前に持っていくものを並べるスペース
などです。
毎日同じ場所に戻すようにすると、子ども自身が必要なものを探しやすくなります。
モンテッソーリの教室でも、物の置き場所を決め、子どもが自分で取り出したり戻したりできる環境を大切にしています。
家庭でも、「どこにあるか分かる」「自分で取れる」という状態を目指してみましょう。
朝の支度を「見える化」する
「次は何をするんだっけ?」と迷ってしまう子どもには、朝の流れを見える形にする方法もおすすめです。
例えば、次のような順番をイラストや写真で並べてみましょう。
- 起きる
- 着替える
- 朝ごはんを食べる
- 顔を洗う・歯を磨く
- かばんと帽子を持つ
- 靴を履いて出発する
子どもが見やすい場所に貼っておけば、自分で次の行動を確認できます。
終わった項目に印をつけたり、カードを裏返したりする仕組みを取り入れてもよいでしょう。
ただし、チェックすること自体が目的にならないよう、子どもが分かりやすく使えるシンプルなものにすることが大切です。
「次は何かな?」と一緒に確認しながら、少しずつ自分で動けるようにしていきましょう。

朝の支度をラクにする、前日の夜の準備
翌日の服を一緒に選んでおく
朝になってから服を選ぶと、「これは嫌!」「こっちがいい!」と時間がかかることがあります。
そんなときは、前日の夜に翌日の服を選んでおくのがおすすめです。
「明日はどっちの服にする?」
と、2つ程度の選択肢から子どもに選んでもらいましょう。
自分で選んだ服を、翌朝すぐに取り出せる場所に置いておきます。
朝の判断を一つ減らすだけでも、支度が進みやすくなる場合があります。
園かばんや提出物を確認しておく
園かばんの中身や連絡帳、提出物などは、できるだけ前日の夜に確認しておきましょう。
子どもに任せられる部分は一緒に行い、大人の確認が必要なものは大人が担当します。
例えば、子どもにはハンカチをかばんに入れてもらい、大人は連絡帳や必要な書類を確認する、といった分担です。
翌朝になってから忘れ物に気づくことが減れば、親子ともに余裕を持ちやすくなります。
靴や帽子も出発しやすい場所へ
朝の最後に慌てないためには、玄関周りを整えておくことも役立ちます。
靴は子どもが自分で履きやすい場所に置く。
帽子やかばんは、子どもが手を伸ばせる高さに用意する。
小さな工夫ですが、出発直前の「帽子はどこ?」「靴がない!」を減らすことにつながります。
朝、遊び始めたり、ぼーっとしたりしたときは?
遠くから呼ぶより、そばに行って伝える
着替えの途中でおもちゃに手が伸びたり、パジャマのまま座り込んでいたり。
そんなときは、遠くから「早くして!」と繰り返すより、子どものそばに行ってみましょう。
目線を合わせて、
「次はズボンを履こうね」
「着替えが終わったら、朝ごはんにしよう」
と、次の行動を一つだけ伝えます。
必要に応じて、服を手の届くところに置いたり、最初の動作だけ手伝ったりしてもよいでしょう。
遊びたい気持ちも受け止める
朝の支度中に遊び始めてしまったとき、「遊ばないで!」と叱りたくなることもありますよね。
しかし、子どもにとっては、遊びたい気持ちも大切なものです。
そんなときは、
「そのブロック、続きが気になるんだね」
「帰ってきたら、また遊ぼうね」
と、気持ちを受け止めながら区切りを伝えてみましょう。
また、着替える場所からおもちゃが見えないようにするなど、気が散りにくい環境を整えることも役立ちます。
起きたばかりで動けないこともある
朝、なかなか支度を始められない理由として、まだ眠気が残っていることも考えられます。
起きてすぐに行動を求めるのではなく、カーテンを開けて朝の光を取り入れたり、水分をとったりする時間をつくってみましょう。
また、毎朝強い眠気がある場合には、睡眠時間や生活リズムを見直すことも大切です。
子どもが動かない理由を、すべて「やる気がないから」と考えないようにしたいですね。
時間がない朝は、親が手伝っても大丈夫
毎日すべてを自分でやらせなくてもよい
モンテッソーリ教育では子どもの自立を大切にしますが、どんなときも一人でやらせるという意味ではありません。
出発まで時間がない日や、子どもの体調がよくない日には、大人が手伝うことも必要です。
「今日は時間がないから、ここは手伝うね」
「ズボンは自分で履いて、シャツは一緒に着よう」
と、状況に応じて対応してみましょう。
大切なのは、毎日すべてを完璧にこなすことではなく、子どもが自分でできる経験を少しずつ積み重ねることです。
余裕のある日に練習する
朝は時間が限られているため、新しい動作を練習するには難しいこともあります。
例えば、ボタンを留める練習や、靴ひもを結ぶ練習などは、休日や夕方の落ち着いた時間に取り組んでもよいでしょう。
時間に追われず、自分のペースで繰り返せる環境があると、子どもも取り組みやすくなります。
できるようになった動作を、少しずつ朝の支度に取り入れていきましょう。
まず一つ変えるなら「服の置き場所」から
朝の支度を改善しようと思うと、起きる時間や声かけ、収納方法など、いろいろなことを変えたくなるかもしれません。
しかし、一度にすべてを変える必要はありません。
まず一つ取り組むなら、子どもが自分で服を取り出せる場所をつくることがおすすめです。
例えば、低い棚に翌日の服を並べておく。
靴下を子どもの手が届くかごに入れる。
それだけでも、大人に「取って」と頼まずに済む場面が増えるかもしれません。
自分でズボンを履けたら、
「自分で履けたね」
「今日はここまでできたね」
と、できたことを具体的に伝えてみましょう。
大きな変化を急ぐよりも、小さな「自分でできた」を積み重ねることが大切です。

よくある質問
Q. 「自分でやる!」と言って、時間がかかりすぎてしまいます。
自分でやりたいという気持ちは、成長の中で見られる大切な姿です。
時間がかかる動作は、少し早めに始められるよう、朝の順番を工夫してみましょう。
どうしても間に合わない日は、「ここまでは自分でやって、続きは手伝うね」と、できる範囲を決める方法もあります。
Q. 服を選ぶのに時間がかかり、毎朝もめてしまいます。
前日の夜に服を選んでおく方法がおすすめです。
選択肢を2つ程度に絞り、「どっちにする?」と聞いてみましょう。
子ども自身が選んだ服を、翌朝すぐに取り出せる場所に置いておくと、支度を始めやすくなります。
Q. きょうだいがいて、下の子の世話で上の子を待てません。
きょうだいがいる家庭では、一人ひとりの支度を丁寧に見守るのが難しいこともあります。
上の子には「靴下を履くところまでお願いね」「帽子は自分で持ってきてね」と、できる部分を具体的に任せてみましょう。
ただし、上の子だからといって、いつも一人で頑張らせる必要はありません。
年齢やその日の様子に合わせて、必要なときは手伝ってあげましょう。
Q. 朝の支度を嫌がって、泣いてしまうときはどうすればよいですか?
まずは、何が嫌なのかを確かめてみましょう。
眠い、着たい服が違う、まだ遊びたい、園に行くことが不安など、理由はさまざまです。
「この服がよかったんだね」「まだ遊びたかったんだね」と気持ちを受け止めながら、必要な支度を一つずつ進めてみましょう。
登園への強い不安が続く場合などは、園の先生に相談することも大切です。
まとめ|「早くして!」を減らすには、子どもが自分で動ける環境を
子どもの朝の支度が進まないのは、時間の感覚がまだ育っていなかったり、何から始めればよいか分からなかったり、自分で準備しにくい環境になっていたりすることが理由かもしれません。
そんなときは、「早くして!」と何度も伝えるより、次にすることを一つずつ具体的に伝えてみましょう。
また、服や園の持ち物を子どもの手が届く場所に置き、朝の流れをイラストや写真で見えるようにすることも役立ちます。
前日の夜に少し準備しておくだけでも、朝の負担を減らせる場合があります。
もちろん、時間がない朝には、大人が手伝っても構いません。
大切なのは、毎朝完璧に自分で支度させることではなく、子どもが「自分でできた」と感じられる経験を増やしていくこと。
まずは、服の置き場所を一つ変えるところから始めてみませんか。
モンテッソーリ久が原子どもの家では、子どもが自分で身の回りのことに取り組めるよう、発達に合わせた環境づくりを大切にしています。
子どもたちがどのように自分で活動し、身支度に取り組んでいるのか気になる方は、ぜひ教室での体験を通して、実際の様子をご覧ください。